11. よくある質問・トラブルシューティング

11.1. 購入に関して

11.1.1. Q. 代金の支払方法を教えてください。

A.
【法人の場合】
以下の条件での後払いとなります。

支払方法: 当社指定銀行口座への現金振込
支払期日: 納品翌月末日

【個人の場合】
PayPalにてクレジットカードでお支払いください。

11.1.2. Q. 当社から発行される書類の種類を教えてください。

A.
法人の場合は、請求書・納品書・見積書を発行いたします。
個人の場合は、PayPal にて領収書を取得してください。
その他の書類を発行希望の際はご相談ください。ただし、内容によりお断りする場合もありますのでご了承ください。

11.1.3. Q. 代理店などエンドユーザ以外が注文する方法を教えてください。

A.
代理店等、エンドユーザ以外の方が見積を依頼する場合はコメント欄(自由記入欄)に以下の情報をご記入ください。

・エンドユーザの所属
・エンドユーザの氏名

なお、エンドユーザに直接納品いたしますので、ご注文の際はエンドユーザの送付先情報をお知らせいただきます。

11.2. ライセンスに関して

11.2.1. Q. 講義での使用方法を教えてください。講義用ライセンスの使用条件を教えてください。

A. 講義用ライセンスを教育機関での講義目的に限り、教員及び授業に参加する学生全員でお使いいただけます。

申請時には以下の注意点をご確認下さい。
・講義を行われる先生から直接問い合わせ下さい。
・詳細記入欄に授業名・期間・おおよその学生数ご記入下さい。
・後日授業資料を共有いただけますと幸いです。

講義用ライセンスは こちら から申請することができます。

11.3. ソフトウェア動作全般

11.3.1. Q. 思ったようにモデルを作成できません。計算できません。動作しません。

  1. まず、以下の基礎的なチェックを行ってください。
  • インストール時の注意事項 を確認する。
  • 使用中のWinmostarが無償版、学生版、プロフェッショナル版、プロフェッショナル版(トライアル)のいずれに該当するか確認し、問題を起こしている機能がその版で使用可能か 機能表 を見て確認する。
  • 使用中のセキュリティ対策ソフトの活動記録を確認し、Winmostarおよびcygwin_wmのインストールフォルダの下のアプリケーションの活動が妨害された記録がないか確認する。
  • Winmostarを最新版にアップデートし(使用中のバージョンと共存させることが可能)、 既知の不具合よくある質問・トラブルシューティング に類似する状況がないか確認する。
  • 保存するファイルやそれを含むディレクトリ(上位階層全てを含む)の名前に、日本語、全角文字などのマルチバイト文字や特殊記号が含まれている場合は、一部ソルバで不具合が出ることがあるため半角英数のみとなるようにする。
  • 実行した処理で何かしらログが出力されているか作業フォルダを確認し、ログの内容を確認する。
  • 計算が開始されたが計算結果がおかしいと感じた場合は、メインメニューで使用したソルバのメニューから「log(out)ファイル編集」などをクリックし、ログの内容を確認する。
次に、メモ帳などで以降の作業の記録を取れるようにしてください。不具合の再現方法が判明した場合、作業の記録と一緒にご報告頂くと比較的短時間で修正できることがあります。
そして、Winmostarの チュートリアル のうち、これから使いたいソルバの基礎編チュートリアルをトレースしてください。
基礎編チュートリアルのトレースに失敗する場合は、以下を試してください。
  • 誤操作でないことを確認するため再度トレースする。
  • 並列実行している場合は、シリアル実行(並列数1)に切り替える。
  • Winmostarを再起動する。
  • OSを再起動する。
  • セキュリティ対策ソフトで、Winmostar、cygwin_wmのインストールフォルダ、およびソルバ(MPIを含む)が監視対象外に設定する。
  • cygwin_wmを使用している場合は、 ヘルプ ‣ cygwin_wmを診断 でcygwin_wmの簡易的な診断を実行する。
  • Winmostar, cygwin_wmおよび使用したソルバを再インストールする。
  • 他のPCで試す。

次に、最終的に計算したいものに極力近いと思われるチュートリアルをトレースしてください。 それに成功したら、最終的に計算したいものに少しずつ寄せるように計算条件を変更し、問題発生箇所を特定したら以下を試してください。

11.3.3. Q. 「ERROR: I/O error 32」と表示され処理に失敗します。

A. 処理に関わるファイルがWinmostar以外のアプリケーションまたはプロセスで開かれていてロックされている場合や、削除されている可能性があります。
OSを再起動し他のアプリケーションが開いていない状況でお試しください。

11.3.5. Q. Cygwinを使う処理が異常終了します。/ ツール ‣ cygwin_wmを診断 機能で ... ERROR ... と表示されます。/Cygwinの黒いウィンドウに child_info_fork::abort: ... Loaded to different address: parent ... != child ... などと表示されます。

A. 以下の手順を上から順に一つずつ実行し、その都度、エラーが起きた処理を再実施してください。

  1. 一般的な 一般的な不具合の対処 を実施する
  2. マシンを再起動する
  3. 使用しているcygwin_wmの cygwin1.dll 以外を検索して削除し、マシンを再起動する

警告

  • 同一マシン上にcygwin_wm以外に cygwin1.dll が存在して場合の一部のケースでこの操作が必要です。
  • cygwin1.dll は他にCygwinをインストールしていなくても、各種フリーウエアなどに同梱されていることがあります。
  1. 使用しているマシン上の全てのCygwinが終了している状態で、Windowsの[ファイル名を指定して実行]にて C:\cygwin_wm\bin\ash.exe (cygwin_wmを C:\cygwin_wm にインストールした場合)を実行し、 /bin/rebaseall -v というコマンドを実行しマシンを再起動する。
  2. セキュリティ対策ソフトを一時的に無効する。
  3. CygwinのFAQ に記載されている不具合を起こしがちなソフトを無効にする。
  4. その他、 Cygwinのfork()関連の失敗に関するFAQ に記載された方法を試す。

11.3.6. Q. ツール ‣ cygwin_wmを診断 機能で WARNING ... some files are missing と表示されます。

A. cygwin_wmを再インストールしてください。
再インストールしても表示される場合は、セキュリティ対策ソフトを一時的に無効にするか、インストール先・インストーラを監視対象外に指定してください。

11.4. 分子のモデリング・系の作成に関して

11.4.1. Q. 化学結合の種類(一重、二重など)を変更する方法を教えてください。

A. 例えば以下に示す方法で変更できます。
1) 編集 ‣ 結合 ‣ 結合付加 またはメインウィンドウ上部のk 結合付加 ボタンを複数回押すことで、結合の種類を変更できます。
2) 編集 ‣ 結合 ‣ 結合再生成 を選択すると原子間距離から判定された結合次数で自動的に化学結合の種類が変更されます。予め 編集 ‣ クリーン により構造最適化しておくと、より妥当に自動変更されることがあります。
3) 小さい分子が一つだけしか表示されていない場合は、MOPAC計算を実行することで、Population解析結果を用いて自動的に結合次数が変更されます。

11.4.2. Q. MD ‣ 溶媒を配置/系を構築 機能を実行すると Error : Failed to solvate. などと表示され処理に失敗します。

---------質問詳細---------

MD ‣ 溶媒を配置/系を構築 を実行した際に generate.log

gmx insert-molecules -try 100 -f gmx_tmp_water.gro -o gmx_tmp_water_tmp.gro -ci mol0.gro -nmol 64
...(途中省略)...
set +v
Error : Failed to solvate.

などと出力され処理が正常終了しません。

A. 一般的な不具合 の対処と、Cygwinの一般的な不具合 の対処に加え、分子数を減らすか、密度を減らして実行してください。 また、それでも実行できない場合は、内部的に使用しているGromacsの再インストールを、以下の手順で実施してください。

  1. cygwin_wmのインストールフォルダの下の /etc/profile.d/winmostar.sh の中の
source /usr/local/gromacs_sse/bin/GMXRC

または

source /usr/local/gromacs_avx/bin/GMXRC

の行をコメントアウトまたは削除する

  1. Winmostarの ツール ‣ cygwin_wm起動 をクリックし、起動したcygwin上で 各種ソルバのインストール手順(Cygwin) の「1-2. Gromacs」のインストール手順を試みる
  2. ツール ‣ cygwin_wm起動gmx と実行し GROMACS: gmx, VERSION ... などとGromacsの起動を示すメッセージが表示されたら再ビルドは成功である

分子数が大きい場合(ケースにもよるが10,000程度)は、現在内部処理で使用している gmx solvate の処理の限界となるケースもあるので、 編集 ‣ 部分編集 ‣ 部分複製 で分子を並べてください。

将来的には本機能で分子数が大きい場合にも対応予定です。

11.5. ローカルマシンでのMPI・並列実行に関して

11.5.1. Q. MPICHが計算途中で終了します。

---------質問詳細---------
MPICH実行中に、次のようなエラーを表示して計算が途中終了となることがあります。
op_read error on left context: Error = -1
op_read error on parent context: Error = -1
unable to read the cmd header on the left context, Error = -1
unable to read the cmd header on the parent context, Error = -1
Error posting readv, An existing connection was forcibly closed by the remote host.(10054)
connection to my parent broken, aborting.
state machine failed.

A.
このエラーはMPICHがlocalonlyでもネットワークアダプタを使うため、ネットワークアダプタが途中で切れてしまうため発生するエラーです。
しかし初めからネットワークアダプタが切れている場合、MPICHはネットワークアダプタを使用しないため、このエラーは発生しません。
MPICHを用いて長時間の計算を行う場合、ネットワークアダプタを無効にしてから計算を実行して下さい。

11.5.2. Q. LAMMPS, Quantum ESPRESSOのMPI並列実行時に Unable to open the HKEY_LOCAL_MACHINE\SOFTWARE\MPICH\SMPD\process\???? registry key, error 5, アクセスが拒否されました。 という警告が表示されます。

A. MPICHがレジストリを書き換えようとするのですが、管理者権限がないので失敗したというメッセージです。
管理者権限でWinmostarを起動すればメッセージは出なくなりますが、
メッセージが出ている状態でも計算自体は正常に実行されているので、無視しても問題ありません。

11.6. リモートジョブに関して

11.6.1. Q. 社内や学内のスパコンまたはLinuxサーバにジョブを投げる方法を教えてください。

A. 接続先のコンピュータ固有の環境設定などが必要な場合も、リモートジョブ用のひな形スクリプトを作成することで可能になります。
詳しい手順は リモートジョブ投入チュートリアル をご確認ください。

11.6.2. Q. リモートジョブ関連操作時にPuTTY関連のエラーが表示されます。sftpテストは成功するが、各種コマンドを実行できません。

---------質問詳細---------
sftpテストの結果はOKにもかかわらず、各種コマンドが実行できない。
また、リモートジョブ投入画面起動時やsftpテスト実施時などで以下のダイアログが表示される。
WARNING: Putty default host name was found in registry.
(\SOFTWARE\SimonTatham\PuTTY\Sessions\Default%20Settings\HostName)
This may cause errors while job submission.
Clear this setting.

A.
原因:
このWARNINGはPuttyのHostNameが設定されているときにおこります。
Puttyの設定はWindowsのレジストリに保存されるため、Winmostar同梱版以外のPuttyであってもHostNameに何らか文字列が保存されていても、この問題がおこります。
対応:
リモートジョブ投入画面のPuttyボタンからPuttyを起動します。Default SettingsのHostName欄に文字列が設定されているか確認します。
この文字列を削除してDefault Settingsを選択した状態でSaveすると、この問題を解消できます。
(なお、Port欄の入力内容は特に影響しません。)

11.7. MOPAC, CNDO/S, GAMESS, NWChem, Gaussianに関して

11.7.1. Q. MOPACのログに ATOMS **, **, AND ** ARE WITHIN .**** ANGSTROMS OF A STRAIGHT LINE と表示されて異常終了します。

---------質問詳細---------
以下のように3原子が直線になったというエラーが出て止まります。
CALCULATION ABANDONED AT THIS POINT

THREE ATOMS BEING USED TO DEFINE THE
COORDINATES OF A FOURTH ATOM, WHOSE BOND-ANGLE IS
NOT ZERO OR 180 DEGREEES, ARE IN AN ALMOST STRAIGHT
LINE. THERE IS A HIGH PROBABILITY THAT THE
COORDINATES OF THE ATOM WILL BE INCORRECT.
THE FAULTY ATOM IS ATOM NUMBER 69
最後に、
ATOMS 68, 57, AND 54 ARE WITHIN .0134 ANGSTROMS OF A STRAIGHT LINE
と出ます。

A.
角度が180°近くになる角度がZ-Matrixに含まれている場合に表示されます。
メインウィンドウ右下の座標編集機能で、接続先の原子を変更し、Z-Matrixから180°に近い角度がなくなるようにしてください。
Z-Matrixに慣れていない場合は、これ以外の方法として、キーワードに"XYZ"を追加すると、このエラーを回避できることもあります。
あるいは、3原子が直線に並ぶ線上から外れた位置に、原子種XXのダミー原子を追加し、直線に並ぶ原子のZ-Matrix上の接続先として指定することで,
エラーを回避できることもあります。

11.7.2. Q. MOPACを実行するとログに「UNRECOGNIZED KEY-WORDS: ( PM6(ハミルトニアン名))」と出力され計算が終了してしまいます。

A. MOPACキーワード設定でHamiltonian=AM1に変えると動く場合は、使しているMOPACが対応していないハミルトニアンを選択していることによるエラーが出たことになります。
Winmostarマニュアルの MOPACの各バージョンがサポートするハミルトニアンの一覧 をご確認の上、適切なハミルトニアンを選択してください。
それでも動かない場合は 一般的な不具合 の対処を実施してください。

11.7.3. Q. CNDO/SでMethod=INDOを使用したときに計算できません。

A. F以降の元素は同プログラムのMethod=INDOでサポートされていません。
Method=CNDOにするか、GAMESSなどの非経験手法を使ってください。

11.7.4. Q. GAMESSでNMR計算を実行できません。

A. まずは 一般的な不具合 の対処を実施してください。
また、$SCFのDIRSCF=.F.にすること、並列計算ができないのでNCPUS=1にすることが必要です。
(計算結果出力の最後の方に以下の様に詳細が記載されます。)
INCOMPATIBLE OPTION CHOSEN WITH RUNTYP=NMR ***
NMR MAY BE COMPUTED ONLY FOR SCFTYP=RHF,
NO CORRELATION OPTION (DFTTYP, CITYP, CCTYP, MPLEVL) MAY BE CHOSEN
NO SEMI-EMPIRICAL OPTION (GBASIS=AM1/PM3/MNDO) MAY BE CHOSEN
DIRECT AO INTEGRAL CALCULATION (DIRSCF) IS NOT ENABLED,
AND/OR PARALLEL EXECUTION IS NOT ENABLED.

11.7.5. Q. GAMESSの実行時に「* ERROR: MEMORY REQUEST EXCEEDS AVAILABLE MEMORY」などとログに出力され計算が異常終了します。

A. GAMESSの実行時に割り当てられたメモリ容量が足りていないことを意味しています。
インプットファイル内のMWORDS=の数値を増やすことで、エラーを回避できます。

11.7.6. Q. GAMESSにおいて、1原子だけの系の計算で「WARNING. NUMBER OF INTERNAL COORDINATES IS GREATER THAN (3N-6), BUT NO SYMMETRY COORDINATES ARE GIVEN.」と表示されて異常終了します。

A. 原子が1個だけの系においてZ-matrixを使うことによる不具合を示すメッセージになります。
この場合は直交座標を使う(COORD=UNIQUEにする)ことで解消します。
WimostarのGAMESSキーワード設定ウィンドウにおいて、COORDをUNIQUEに変更してください。

11.7.7. Q. GAMESSのログに「 **** ERROR **** PCM SPHERE(S) MUST HAVE A POSITIVE RADIUS 」と表示され異常終了します。

A. Cavity半径がGAMESSに内蔵されていない原子が含まれている可能性があります。
Cavity半径を指定するためには、$PCM行の直後に次のステートメントを追加してください。
$PCMCAV RIN(13)=1.55, RIN(15)=1.55 $END
この例では13番目と15番目の原子にCavity半径を与えます。

11.7.8. Q. GAMESSの実行時に「ERROR: BAD DELOCALIZED COORDINATES GENERATED!!!」とログに出力され計算が異常終了します。

A. WimostarのGAMESSキーワード設定ウインドウにおいて、Z-Matrixタブを選択 --> $ZMATのチェックを外してください。

11.7.9. Q. NWChemの並列実行時に「Please specify an authentication passphrase for smpd: 」とログに出力され計算が流れません。

A. MPICH2インストール時にパスフレーズ(passphrase)を省略してしまうとそのようなエラーになる場合があります。
解決方法はいくつかありますが、MPICH2を一旦アンインストールしてから、再度インストールすると解決することがあります。
その場合は、MPICH2のアンインストール前にsmpdをストップし、MPICH2の再インストール後にsmpdをインストールする必要があります。

11.7.10. Q. Gaussianのoutファイルを読み込んだのですが、軌道(固有)エネルギーなどが標示されません。

A. 実行したGaussianの入力ファイルにpop=fullまたはpop=regularが抜けている場合は表示されません。

11.7.11. Q. Gaussianでchkファイルを読み込んだ計算を実施する方法を教えてください。

A. リモートジョブの場合はSubmitJobウィンドウで[Advance]のチェックを入れ、[Delete *.chk]のチェックを外すとchkファイルが残され、その上でchkファイルを生成した時と同じ名前でジョブを流すとchkファイルを読み込んで計算が流れます。
--Link1-- を使う方法の方が設定自体は簡便なため、こちらの使用もご検討ください。

11.8. Gromacs, LAMMPSに関して

11.8.1. Q. 分子動力学計算においてどのように系を平衡化したらいいですか。

A. 低分子の平衡状態の凝集系(気体ではなく液体・固体のこと)計算が目的のケースについてまず述べます。
まず初期状態の分子を並べる際には、最終的な密度に極力近い密度に設定してください。
しかし、かなり低密度でないと並べられないときはそれで構いません。
その後、ポテンシャルエネルギー、温度、密度の変化が収束するまで、エネルギー極小化、温度一定計算、温度圧力一定計算を流してください。
初期密度が低すぎた場合は、温度圧力一定計算で、目標圧力よりも高めの圧力(例えば100倍程度)で一旦圧縮してください。
最終的にアンサンブル平均の物理量に関心があり、平衡化後に目標温度・圧力に達しているならば、細かい平衡化手順の差は計算結果に大きな影響を与えることは少ないです。
高分子、ガラスの場合は、真の意味で平衡状態を得るには、現実的な計算時間では不可能な場合がほとんどのため、エネルギー、温度、密度の収束の加え、観察したい物理量に影響が大きいと思われる物理量の相関が0に到達する程度の時間平衡化計算を実施します。
気体の場合は圧力制御は不安定なため、エネルギー極小化と温度一定計算のみで平衡状態を得ます。

11.8.2. Q. GromacsのER法結果読み込みを実行しても結果が表示できません/エラーが出ます。

A. ER法を実行する際に指定した出力先ディレクトリに生成されるermod.outの内容を確認してください。
ermod.outの中に「 The minimum of the energy coordinate is too large; the ecdmin parameter needs to be smaller」と書かれている場合は、ER法実行ウィンドウの[Options]ボタンを押し、[For Solution System]のと[minimum value of the solute-solvent energy (ecdmin)]の値を小さくしてください。
具体的な値の設定方法など、詳しくは ERmodのwikiのFAQ を参照してください。
また、同様にermod.outの内容と ERmodのwikiのFAQ全般 の内容を照らし合わせ、ermodの設定の変更が必要な場合はER法実行ウィンドウの[Options]で設定してください。

11.9. Quantum ESPRESSO, OpenMXに関して

11.9.1. Q. Quantum ESPRESSOを用いた計算が失敗します。計算結果の表示でエラーが出ます。

A. まずは 一般的な不具合 の対処を実施してください。
次に、WinmostarではQEの各モジュールをバッチ処理で連続実行しているので、Winmostarが生成したbatファイル(ローカル実行の時)またはshファイル(リモート実行の時)に記述された処理の流れを見ながら、生成された出力ファイル(pwoutまたはout)ファイルを順番に確認してください。
例えば、フォノン計算の場合はph.xの出力ログ(ph.out)を確認してください。
最初に「Error in routine ...」などのエラーが出現した箇所の対処を施し、再度ジョブを実行してください。
特定のキーワードに関するエラーは、そのキーワードの設定を 公式サイト でご確認ください。
典型的なQEのエラーの対処方法は 公式サイトのFAQ に記載されています。

11.9.2. Q. Quantum ESPRESSO, OpenMXのSCF計算または構造最適化計算が収束しません。

A. 以下の対策を順に実施してください。
必ず試すべきこと:
・第一原理計算は設定項目が多いので、適当に計算条件を変えず、きちんと記録を取りながら一連の計算を流す。
QEの一般的な不具合 の対処を実施する。
・本当に収束しない傾向にあるいかチェックする。
・QEではEstimated accuracyをSCFサイクル数に対しプロットする。両対数プロットならなおよし。
・スピン分極状態・電荷が妥当か調べる。
・up/downスピンの並び方を与える。
・系全体の磁気モーメントを拘束する。
・尤もらしい初期構造を使う。
・実験や他の計算手法で得られた構造を使う。
・計算する上で配置に任意性のある原子(X線で見えない軽元素、固溶体、欠陥、非整数の組成など)がある場合は、違う配置を試す。
・固溶体・欠陥を含むようなケースでは、系内に大きなダイポールモーメントが生じないような初期構造にする。

次に試すこと:
・mixing_modeを調整する。
・擬ポテンシャルの種類を変える。
・スピン分極の初期値を調整する。(原子単位または系全体)
・外部電場、欠陥、吸着など比較的複雑な条件を設定している場合は、それらをなくしたよりシンプルな条件で試し、その計算が収束したなら、その計算の終状態(原子配置・波動関数など)を始状態として計算を開始する。

・収束しなかった計算の途中から計算を開始する(SCFのアルゴリズムは履歴に依存するため)。
・行列計算のパラメータを調整する(収束しづらい設定のみ見直す)。
・スラブに分子が吸着するような、系内に大きなダイポールモーメントが発生してしまう場合は、ダイポールの補正を行う。

計算時間・計算精度との兼ね合いで試すこと:
・カットオフエネルギーを大きく取る。
・K点を多めにとる。
・smearingを調整する(種類・幅)。
・波動関数の更新度合(QEではmixing_beta)を小さくする。

計算精度との兼ね合いで試すこと:
・SCFの収束パラメータを緩くする。

11.9.3. Q. Quantum ESPRESSOのSCF計算が出力ファイル(.pwoutまたは.out)に「too few bands」と表示され異常終了します。nbndの設定方法が分かりません。

A. まずは QE公式のマニュアルのnbndの説明 をご確認ください。
nbndを使わずに計算を流すと、QEが自動でnbndを適当に設定して計算するので、Winmostarのキーワード設定画面で「Use nbnd」のチェックを外してください。
nbndを増やしたい場合は、nbndを使わずに実行したときにpwoutまたはoutファイルに出力される"number of Kohn-Sham states"の値よりも大きい値をnbndに設定してください。
また、Winmostarのキーワード設定画面の「Use nbnd」のところに表示される「# valence bands: 」の値も参考にしてください(詳細は Winmostarマニュアル を参照)。

11.10. その他の機能に関して

11.10.1. Q. ハンセン溶解度(HSP)パラメータを計算するとエラーが出ます。ログファイル( *_hsp_tmp\temp.out )に ... undefined ... と出力されます。

A. 同機能の原子数制限に引っかかったものと思われます。現在、総原子数は最大250、水素以外の原子数は最大120という制限があります。繰り返し構造を持つオリゴマーの場合は、本来は溶解度パラメータが分子サイズで規格化された指数であることにご注意ください。