ソルバとは、量子化学計算、第一原理計算、分子動力学計算などのシミュレーションそのものを実行するプログラムのことを指します。
ソルバは、各種計算条件を独自の書式で記したテキストファイル(入力ファイル)を受け取り、シミュレーションを実行し、膨大な量のログファイル(出力ファイル)を生成します。
Winmostarは、これらの入出力ファイルを自動で生成あるいは可視化します。 Winmostarが一括で生成する入力ファイルは、ソルバの学習にも大いに役立ちます。
量子化学計算
対応するソルバ:GAMESS、Gaussian、NWChem、MOPAC、CNDO/S、DCDFTBMD
化合物ごとのパラメータを用いることなく、分子の電子状態を計算します。これにより、分子の安定・遷移状態構造、様々なスペクトル(IR/Raman、NMR、UV-Vis)、化学反応エネルギーなどを取得できます。波動関数理論と密度汎関数理論のいずれかを利用します。特に波動関数理論を使う場合は分子軌道法と呼ばれることもあります。電子状態計算のうち、孤立分子やクラスタが計算対象の場合は量子化学計算と呼ばれることが多いです。
GAMESSとNWChemは無料で入手できます。無料で入手できるソルバの中では、基本的には汎用的なGAMESSの使用を推奨します。NMRなど一部の計算はNWChemを使用してください。
大まかな傾向が取得できれば良い場合は、高負荷な計算をモデル化した半経験的分子軌道計算を使うこともあります。半経験的分子軌道計算については、基本的にはMOPACの使用を推奨します。UV-Visスペクトルの計算時のみCNDO/Sを使用してください。DCDFTBMDは分割統治アルゴリズムによる高速計算を実現しており、大規模系の計算または長時間の動力学計算に向いています。
第一原理計算
対応するソルバ:Quantum ESPRESSO、OpenMX、FDMNES、AkaiKKR、VASP
化合物ごとのパラメータを用いることなく、結晶・表面の電子状態を計算します。これにより、安定・遷移状態構造、状態密度(DOS)、バンド構造、スペクトルなどを取得できます。密度汎関数理論を利用します。電子状態計算のうち、結晶や表面が計算対象の場合は第一原理計算と呼ばれることが多いです。
基本的には汎用的なQuantum ESPRESSOの使用を推奨します。大規模系や一部の物性を計算する際にはOpenMXを使用してください。XANES、EELSスペクトルを手軽に取得したい場合はFDMNESを使用してください。固溶体を計算したい場合はAkaiKKRを使用してください。
分子動力学計算
原子の時々刻々の運動の様子を計算することで原子・分子集合体の熱力学的な性質を計算します。これにより液体・ポリマー・固体の熱物性(密度、比熱など)、拡散係数、応答特性(誘電率、粘度、熱伝導度、イオン伝導度、S-S曲線)などを取得できます。電子状態計算から原子間力を取得して運動を計算する第一原理分子動力学計算と、原子間力を古典力学的ポテンシャルで近似して運動を計算する古典分子動力学計算があります。第一原理分子動力学計算ではその高い計算コストから熱物性の計算が困難なことが多いため、単に分子動力学計算と書かれている場合には古典分子動力学計算を指すことが多いです。
基本的には汎用的なLAMMPSの使用を推奨します。有機系で計算時間を短縮したい場合や、一部の物性を計算したい場合は、Gromacsを使用してください。